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全 28 章中 24 章
濒湖脉学
脈は血液の流れる通路であり、気血運行の先導である。血のトンネルは、呼吸の気息と呼応する。
脈の徴象は大地に倣い、血液が集まる府であり、心と合し、皮膚の各部に分布する。
脈の資源は腎(先天の本)に始まり、胃(后天の本)に資生される。脈は陽中の陰(陽の中の陰に偏る部分)に属し、根本は営衛(営は滋養の血、衛は防御の気)にある。営は陰血に属し、衛は陽気に属す。営は脈中を巡り、衛は脈外を巡る。
脈は自ら動くことができず、気の運行に従って搏動する。気が動けば脈が応じ、陰陽相互作用の義を示す。気は鞴(ふいご)の鼓動のようであり、血は波がうねるようである。血脈と呼吸は、体内で上下循環してやまない。
十二経脈(人体の十二条の主要経絡)にはすべて動脈の搏動があるが、ただ手太陰肺経の寸口(手首の撓骨動脈部)のみが診脈の標準位置と選ばれる。この経は肺に属し、上は喉につながり、脈気が集まる所であり、呼吸の出入りがこれに応じる。
一呼一吸を一息とし、脈が四回搏動するのが正常である。一日一夜に約一万三千五百息ある。呼吸のたびに、脈気は六寸運行し、一日一夜で合わせて八百一十丈運行する。
初めて脈を診るとき、患者に手のひらを上に向けさせる。手首の高骨(撓骨茎状突起)の所を関と称する。関の前を陽とし、関の後を陰とする。陽の位を寸とし、陰の位を尺とし、順に推し求める。
心・肝は左手の脈に対応し、肺・脾は右手の脈に対応する。腎と命門(右腎、相火をつかさどる)は、両尺の部位に対応する。魂魄穀神(精神と消化機能)はすべて寸口で診察できる。左手は司(官)をつかさどり、右手は府をつかさどる。左脈がやや大きいのは男に順じ、右脈がやや大きいのは女に順ずる。命脈の扶助は、男は左を主とし、女は右を主とする。
関前一寸は生命の主であり、左を人迎と称し、右を気口と称す。神門(尺脈の後部)は両関の後に診る。もし両所に脈がなければ、病は重く治り難い。
男女の脈は基本相同じであるが、ただ尺脈に差異があるのみ。男子は陽弱陰盛(寸弱尺盛)が常であり、逆は病に至る。
脈に七診あり:浮・中・沈・上・下・左・右、細かく推し求めるべし。また九候あり:軽く挙げ、重く按じ、三部それぞれ浮中沈に分かち、各部ごとに五動を候う。
寸は胸より上を候い、関は膈より下を候い、尺は臍より下、足跟に至るまでを候う。左脈は左側を候い、右脈は右側を候う。疾病がどの部位にあるかによって、相応する脈位に異常があり、病のない所には異常がない。
浮脈は心肺を主り、沈脈は腎肝を主る。脾胃は中焦に居り、脈は浮沈の間にある。
心脈の浮は、浮大にして散す。肺脈の浮は、浮渋にして短し。肝脈の沈は、沈にして弦長なり。腎脈の沈は、沈実にして濡軟なり。
脾胃は土に属し、脈は和緩なるを宜しとする。命門は相火であり、左寸と同じく断ずる。
春は脈弦、夏は脈洪、秋は脈毛(羽毛のごとく軽浮)、冬は脈石(沈実)、四季の末には和緩に応ず。病が内に生ずれば、脈象が四時に背くのは凶である。春に秋脈が現れれば、金が木を克することを意味し、金の旺んなる日に死す。五臓もこれに類推し、予後を推断できる。
一年四季の百病は、胃気を本とする。脈に神のあることを貴び、審察せざるべからず。
呼吸を調え、一息に四至五至なれば、平和不変の基準である。一息三至を遅脈とし、遅はすなわち寒を主る。一息六至を数脈とし、数はすなわち熱を主る。遅ければますます冷え、数ければますます熱す。遅数が明らかになったならば、また浮沈を弁別せよ。
浮・沈・遅・数の四脈は、内外の因を弁別できる。外因は天地(六淫)に由来し、内因は人自身(七情)に由来する。天に陰陽風雨晦冥あり、人に喜怒憂思悲恐驚あり。
外因による浮脈は表証である。沈は裏を主り、遅は陰を主り、数は陽盛を主る。内因による浮脈は、虚風によって引き起こされる。沈は気滞を主り、遅は冷を主り、数は熱なること疑いない。
浮数は表熱を主り、沈数は裏熱を主る。浮遅は表虚を主り、沈遅は冷結を主る。表裏陰陽・風気冷熱を弁別し、内外の因を弁え、脈と証を相互に参照する。
脈理は浩瀚であるが、総括すれば浮沈遅数の四綱となる。すでに綱領を得たならば、引申触類して旁通できる。
浮脈は天に法り、軽手で得ることができ、泛泛として上にあり、水に木の漂うがごとし。浮にして有力、洪大にして、来は盛んで去は衰えるを洪脈とす。力なく虚大にして遅柔なるを虚脈とす。虚して甚だしければ散漫として収まらず、散脈とす。辺ありて中なき者は芤脈(葱管を按ずるがごとし)とす。浮にして小なるを濡脈とし、綿が水面に浮かぶがごとし。濡して甚だしければ微となり、按じ求め難く、微脈とす。
沈脈は地に法り、筋骨に近く、下部に沈す。沈して極まるを伏脈とす。沈にして有力なるを牢脈とし、実大弦長なり。牢して甚だしければ実脈となり、充実して強硬なり。沈にして力なきを弱脈とし、柔小にして綿のごとし。弱して甚だしければ細脈となり、蜘蛛の糸のごとく細し。
遅脈は陰に属し、一息三至なり。やや遅より速きを緩脈とし、四至に満たず。一息二至を損脈とし、一息一至を敗脈とし、病は治すべからず。両息一至を奪精とし、脈すでに気なきなり。
浮大にして虚散なるは、あるいは芤・革を見る。浮小なるは濡・微。沈小なるは細・弱。遅細なるを渋脈とし、往来艱難にして、やすく歇止し、止まりて後また来たる。結脈は来勢緩慢にして、止まりてまた来たる。代脈は来勢緩慢にして、止まりて回復すること能わず。
数脈は陽に属し、一息六至なり。一息七至を疾とし、八至を極とし、九至を脱とす。浮大なる者は洪、沈大なる者は牢・実。往来流利なる者是滑脈。有力なるを緊脈とし、指を弾くこと絞索を転がすがごとし。数が寸口に見え、止ある者は促脈とす。数が関部に見え、動脈候うべし、厥厥として動揺し、形状小豆のごとし。
長脈は気機舒畅にして、本位を超ゆ。長にして端直、琴の弦を按ずるがごときを、弦脈とす。短脈は気病にして、本位に満たず、関部には見えず、ただ寸尺にのみ現れる。
一つの脈に一つの形態あり、それぞれ主病あり。数種の脈象が相兼なれば、各証が現れる。
浮脈は表を主り、裏に必ず不足あり。有力は風熱、無力は血弱。浮遅は風虚を主り、浮数は風熱を主る。浮緊は風寒を主り、浮緩は風湿を主る。浮虚は暑傷を主り、浮芤は失血を主る。浮洪は虚火を主り、浮微は労極を主る。浮濡は陰虚を主り、浮散は虚劇を主る。浮弦は痰飲を主り、浮滑は痰熱を主る。
沈脈は裏を主り、寒・積を主る。有力は痰食、無力は気鬱。沈遅は虚寒を主り、沈数は熱伏を主る。沈緊は冷痛を主り、沈緩は水蓄を主る。沈牢は痼冷を主り、沈実は熱極を主る。沈弱は陰虚を主り、沈細は痺湿を主る。沈弦は飲痛を主り、沈滑は宿食を主る。沈伏は吐利・陰毒の聚積を主る。
遅脈は臓を主り、陽気伏潜す。有力は痛を主り、無力は虚寒。
数脈は腑を主り、吐・狂を主る。有力は熱、無力は瘡。
滑脈は痰を主り、あるいは食を傷る。下は蓄血を主り、上は吐逆を主る。
渋脈は少血を主り、あるいは中寒湿。反胃・結腸・自汗・厥逆を主る。
弦脈は飲を主り、病は胆肝に属す。弦数は多熱、弦遅は多寒。浮弦は支飲を主り、沈弦は懸痛を主る。陽弦は頭痛を主り、陰弦は腹痛を主る。
緊脈は寒を主り、また諸痛を主る。浮緊は表寒を主り、沈緊は裏痛を主る。
長脈は気平を主り、短脈は気病を主る。細は気少を主り、大は病進を主る。浮長は風癇を主り、沈短は宿食を主る。血虚なれば脈虚し、気実なれば脈実す。
洪脈は熱を主り、その陰はすなわち虚なり。細脈は湿を主り、その血はすなわち虚なり。緩大は風を主り、緩細は湿を主る。緩渋は血少を主り、緩滑は内熱を主る。
濡小は陰虚を主り、弱小は陽竭を主る。陽竭なれば悪寒し、陰虚なれば発熱す。陽微なれば悪寒し、陰微なれば発熱す。男の微は虚損を主り、女の微は瀉血を主る。
陽動は汗出を主り、陰動は発熱を主り、痛と驚を主り、崩中失血を主る。
虚寒相搏つとき、その名を革脈とす。男子は失精を主り、女子は失血を主る。
陽盛なれば促し、肺癰・陽毒を主る。陰盛なれば結し、疝気・瘕積鬱を主る。代脈は気衰を主り、あるいは膿血を泄し、傷寒心悸、女胎三月。
脈の主病は、適宜と不適宜の別あり。陰陽順逆は、吉凶を推すことができる。
中風は浮緩に宜し、もし急実脈を見れば忌む。浮滑は中痰を主り、沈遅は中気を主る。屍厥(昏厥して不醒)は沈滑脈を見、突然人事を知らず。邪が臓に入れば身冷え、腑に入れば身温し。
風は衛を傷り、浮緩にして汗あり(中風表虚)。寒は営を傷り、浮緊にして汗なし(傷寒表実)。
暑は気を傷り、脈虚にして身熱す。湿は血を傷り、脈緩細渋。
傷寒熱病は、脈の浮洪を喜ぶ。もし沈微渋小を見れば、証脈相反し、必ず凶なり。
汗後の脈静に身凉なれば安し。汗後の脈躁に熱甚しければ癒え難し。
陽病に陰脈を見れば、病必ず危殆なり。陰病に陽脈を見れば、困しても害なし。
脈の上りて関に至らざるは、陰気すでに絶たる。下りて関に至らざるは、陽気すでに竭たる。代脈歇止なれば、臓気傾危す。散脈根なきは、形体損傷して医し難し。
飲食内傷は、気口脈急滑。労倦内傷は、脾脈大にして弱し。知らんと欲すれば是れ気病なるや、下手の脈沈す。沈して極まればすなわち伏す。渋弱なれば病久しくして且つ深し。
火鬱は多く沈脈。滑は痰を主り、緊は食を主る。気滞なれば渋し、血虚なれば芤す。数は火を主り、細は湿を主る。滑は多痰を主り、弦は留飲を主る。熱なれば滑数、寒なれば弦緊。浮滑は風を兼ね、沈滑は気を兼ぬ。食傷なれば短にして疾く、湿留なれば濡細。
瘧疾の脈は自ら弦なり。弦数は熱を主り、弦遅は寒を主る。代散なれば危し。
泄瀉下痢は、沈小滑弱に宜し。もし実大浮洪を見れば、発熱を兼ぬれば悪し。
嘔吐反胃は、浮滑なる者吉。弦数緊渋、結腸なる者は危し。
霍乱の候、脈代を見るも驚くことなかれ。厥逆遅微なれば、すなわち恐ろし。
咳嗽は多く浮脈、病は肺・関・胃にあり。沈緊小なれば危し、伏濡なれば治し易し。
喘急息肩、浮滑なる者は順。沈渋肢寒、散脈は逆証なり。
病熱して火あれば、洪数にして医すべし。沈微火なければ、根なき者は危し。
骨蒸発熱、脈数にして虚。熱して渋小なれば、必ずその躯を損なう。
労極諸虚、脈浮軟微弱。土敗なれば双弦し、火炎なれば急数。
諸病失血、脈必ず芤を見る。緩小は吉、数大は憂なり。
瘀血内蓄、牢大を見るに宜し。沈小渋微なれば、反ってその害となる。
遺精白濁、脈微渋にして弱。火盛陰虚なれば、芤濡洪数を見る。
三消(消渴)の脈、浮大なる者は生く。細小微渋、形脱は驚くべし。
小便淋閉、鼻頭色黄。脈渋小なれば血なし、数大なれば妨げなし。
大便燥結、須らく気血を分かつべし。陽証は数にして実、陰証は遅にして渋。
癲は重陰、狂は重陽。浮洪は吉兆、沈急は凶殃。
癇証の脈は虚に宜し。実急なる者は悪し。浮は陽に属し、沈は陰に属す。滑は痰を主り、数は熱を主る。
喉痺の脈、数は熱を主り、遅は寒を主る。纏喉風・走馬喉痺、微伏なれば治し難し。
眩暈、火と痰あり。左渋は死血を主り、右大は虚を主る。
頭痛は多く弦脈。浮は風を主り、緊は寒を主る。熱なれば洪、湿なれば細。緩滑は厥痰を主る。気虚なれば弦軟、血虚なれば微渋。腎厥なれば弦堅、真痛なれば短渋。
心腹之痛、その類九つあり。細遅は吉、浮大は遷延を主る。
疝気弦急、積聚は裏にあり。牢急なる者は生、弱急なる者は死。
腰痛の脈、多く沈にして弦。浮を兼ぬれば風を主り、緊を兼ぬれば寒を主る。弦滑は痰飲を主り、濡細は腎着を主る。大なれば腎虚、沈実は閃挫を主る。
脚気に四あり:遅は寒を主り、数は熱を主り、浮滑は風を主り、濡細は湿を主る。
痿病は肺虚に属し、脈多く微緩、あるいは渋あるいは緊、あるいは細あるいは濡。
風寒湿気、合して痺となる。浮渋にして緊、三脈斉備す。
五疸実熱、脈必ず洪数。渋微は虚に属し、発渴を忌むことを切にす。
脈に諸沈を得れば、その水あるを責む。浮は気と風を主り、沈は石あるいは裏を主る。沈数は陽水、沈遅は陰水。浮大は出険を主り、虚小は驚くべし。
脹満は脈弦、土は木に制さる。湿熱なれば数洪、陰寒なれば遅弱。浮は虚満を主り、緊は中実を主る。浮大は治し易く、虚小は危極。
五臓は積・六腑は聚。実強なる者は生、沈細なる者は死。
中悪腹胀、緊細なる者は生。脈もし浮大なれば、邪気すでに深し。
癰疽浮散、悪寒発熱。もし痛処あれば、すなわち癰疽の発する所。脈数発熱して痛む者は陽証。数ならず熱ならず疼かざるは陰瘡。潰れざる癰疽は、洪大を怕れず。すでに潰れたる癰疽は、洪大なるは怕るべし。
肺癰すでに成れば、寸数にして実。肺痿の形、数にして力なし。肺癰色白、脈は短渋に宜しく、浮大に宜しからず。唾糊嘔血は危なり。陽癰実熱、滑数なるを知るべし。数にして熱せざるは、関脈芤虚。微渋にして緊なれば、未だ膿成らざる時には当に下すべし。緊数なれば膿すでに成る、断じて下すべからず。
婦人の脈は、血を本とする。血旺なれば孕み易く、気旺なれば孕み難し。少陰の脈動甚だしきを、子ありと称す。尺脈滑利、妊娠喜ぶべし。滑疾にして散せざれば、胎必ず三月。ただ疾にして散せざれば、五月に別つべし。左疾は男、右疾は女。女の腹は箕の如く、男の腹は斧の如し。
産まんと欲するの脈、その至数は経脈常度を遊離するがごとし。羊水すでに下ればすなわち産す、未だ下らざれば驚くことなかれ。
新産の脈は、緩滑を吉とす。実大弦牢、もし兼証あれば逆なり。
小児の脈は、一息七至を平とす。さらに色証と虎口紋を観察するべし。
奇経八脈の診法は別に区別あり。直上直下、浮なれば督脈。牢なれば衝脈。緊なれば任脈。寸部左右に弾指すれば、陽蹻脈を診るべし。尺部左右に弾指すれば、陰蹻脈を診るべし。関部左右に弾指すれば、当に帯脈を診るべし。尺外斜上して寸に至るを、陰維脈とす。尺内斜上して寸に至るを、陽維脈とす。
督脈の病は、脊強癲癇。任脈の病は、七疝瘕堅。衝脈の病は、逆気里急。帯脈は帯下・臍痛・精失を主る。陽維は寒熱・目眩・僵臥を主る。陰維は心痛・胸脇刺痛拘急を主る。陽蹻の病は、陽緩陰急(外側弛緩・内側拘急)。陰蹻の病は、陰緩陽急(内側弛緩・外側拘急)。癲癇瘛疭、寒熱恍惚。八脈の脈証、各々所屬あり。
平人の脈が寸口に顕れざれば、すなわち外絡に移る。兄弟の位置互いに換わる、陽谿・列缺の如し。
病脈すでに明らかならば、吉凶当に別つべし。経脈の外に、また真臓脈(臓腑の真気敗露する時に現れる危重な脈象)あり。
肝絶の脈、刃を循るが如く、堅硬細急。心絶の脈、転動する豆のごとく躁急。脾絶は雀の啄食するがごとく、屋漏の滴るがごとく、水の流るるがごとく、杯の覆るがごとし。肺絶は羽毛のごとく、根なく蕭索とし、麻子の動揺するがごとく、浮波の相合するがごとし。腎脈まさに絶えんとす、来たること訪客の匆匆たるがごとく、来たることは弾石のごとく、去ることは解索のごとし。命脈まさに絶えんとす、蝦游魚翔のごとく、至ることは涌泉のごとく、絶することは膀胱にあり。
真臓脈すでに現れれば、胃気すでに絶たることを説明す。再び色証を参照し、予後を綜合判断す。
『四言挙要』は冒頭から脈診の根本原理を確立している:脈は気血の運行の顕れである。脈は自ら動くものではなく、気に随って至る——これは中医脈診の最も中核的な認識である:脈拍は心臓の鼓動の単純な反映ではなく、全身の気血状態の総合的体现である。これは現代医学が脈拍を心血管機能の指標とみなすこととは根本的に異なる。中医学では、寸口というこの「大会の処」を通して、五臓六腑の機能状態を読み取ることができると考える。
なぜ十二経すべてに動脈があるのに、独り手太陰肺経の寸口だけを取るのか。古人が挙げた理由は次の通りである:肺経は上は喉に繋がり、脈の大会となり、呼吸の出入りがこれに相応する。より深い論理は次の点にある:肺は気を主り、百脈に朝会する——肺は全身の気を統率し、百脈はすべて肺に会する。寸口は肺経の原穴のあるところであり、故に全身の気血を反映できる。この「局部は全体を反映する」という思考様式は、中医診断学の根本的パラダイムである。
本章で最も精辟な貢献は、浩瀚な脈理を浮・沈・遅・数の四綱に総括したことにある。この四つの次元はそれぞれ対応する:
| 次元 | 意味 | 対応関係 |
|---|---|---|
| 浮/沈 | 脈位の深浅 | 表裏弁証(病位) |
| 遅/数 | 脈拍数の快慢 | 寒熱弁証(病性) |
これにより表裏寒熱の弁証の枠組みが構築され、さらに有力・無力をもって虚実を弁別し、完全な八綱弁証の雏形を形成する。これは中医診断学が経験から体系化へと向かう重要な一歩である。
文中では繰り返し「脈証参別」が強調される。すなわち脈象は必ず症状と結びつけて判断しなければならない。同じ脈象でも異なる疾病において異なる意味を持つ(例えば浮脈は表証・虚証・風証を主る)、異なる脈象でも同じ疾病において吉凶の別がある(例えば泄瀉は沈小滑弱が宜しく、実大浮洪は忌む)。この「常の中に変あり、変の中に常あり」という考え方は、中医臨床思考の精髄である。
全文で繰り返し「四時百病、胃気を本とす」が強調される。真臓脈が凶険とされるのは、根本的な理由が「胃はすでに気なし」にあるからである。胃気とは人体の消化吸収機能によって化生される後天の気であり、生命の物質的基礎である。いかなる疾病であっても、胃気がなお存すれば、脈に「神」(従容として緩やか)があり、予後は良い。胃気が敗絶すれば、病勢はすでに深い。
春は弦、夏は洪、秋は毛、冬は石——脈象が四時に従って変化することは、本質的に人体の気血が自然の節律に順応する表現である。もし脈象が四時に背くならば(例えば春に秋の脈を得る)、人体の調節能力がすでに紊乱していることを示し、予後は不良である。この「時-脈-病」の三元対応の思考は、中医時間医学の体现である。
文中の「調停自気、呼吸定息、四至五至、平和の則」は示唆する:呼吸の節律は脈の節律に直接影響する。日常的に意識して呼吸を遅く・深くすることで、呼吸と心拍数を協調させるのは、身心のリラックスと自律神経のバランスに役立つ。これは現代の呼吸トレーニング(緩慢な腹式呼吸6回/分で心拍変動が改善するなど)に伝統的知恵のこだまを提供する。
「春弦夏洪、秋毛冬石」は、人体の気血が季節に応じて自然な起伏があることは健康の表れだと示唆する。現代研究も、血圧・心拍数・内分泌機能に季節リズムが存在することを確認している。養生は自然の節律に逆らうのではなく、四時に順応すべきである——春は舒展を宜とし、夏は養心、秋は収斂、冬は潜蔵。
「四時百病、胃気を本とす」の中核的示唆は次の通りである:消化機能は生命の基礎である。食事のリズムを保ち、過度の飢餓・過飽を避け、偏食しないことは、あらゆる健康要素を維持する根本である。日常いかに忙しくとも、脾胃の機能を保護すべきである。
「人の喜怒憂、思悲恐驚」は内因として脈象の異常を引き起こしうる。現代の心身医学も、感情の動揺が心拍数や血管緊張に影響することを実証している。日常は情志を暢やかにし、長期にわたる不安・怒り・抑鬱などのネガティブな感情の蓄積を避けるべきである。静坐・站樁などの伝統的修習は、本質的には「調息」の過程で脈と気を同時に調節している。
脈診の知識を学ぶことは、身体の異常シグナルを理解する助けになる。例えば、脈拍が突然不規則になったり、極端に速い・遅い・強い・弱いなどは、注目すべきシグナルである。しかし決してこれによって自己診断してはならない。脈診は専門の中医学者が長期の訓練を経て、かつ四診合参を必要とする臨床技能である。余暇に学ぶのは養生の助けになるが、不調があれば早めに医師の診察を受けるべきである。
| 概念 | 説明 |
|---|---|
| 営衛 | 営気は脈内を巡り血を化生し全身を栄養し、衛気は脈外を巡り肌膚を温煦し外邪を防ぐ。両者の関係は「栄養供給」と「免疫防御」の隠喩に似る |
| 寸口 | 手首の後ろの橈骨動脈拍動部で、寸・関・尺の三部に分かれる。寸は関の前(遠位端)、尺は関の後(近位端)。中医診脈の標準的部位 |
| 七診と九候 | 七診:浮・中・沈(指圧の深浅)+ 上・下(脈位)+ 左・右(両手);九候:寸関尺の三部 × 浮中沈の三候、すなわち「三部九候」 |
| 四綱脈 | 浮・沈・遅・数の四大綱脈は28種の常見脈象を統率し、脈診の入門的枠組み |
| 真臓脈 | 「怪脈」「死脈」とも呼ばれ、胃気が敗絶した時に現れる異常な脈象で、古人は疾病の危篤の徴とした |
| 奇経八脈 | 督・任・衝・帯・陽蹻・陰蹻・陽維・陰維の八脈で、十二正経と相対し、主に気血の蓄溢を調節する |
| 胃気 | 中医学でいう脾胃の運化機能およびその化生する水穀の精気で、後天的生命活動の物質的基礎。脈に「胃気」があれば、従容・和緩・有力に表れる |
本内容は中医古典典籍に基づき、伝統文化の学習と研究のためにのみ提供され、いかなる医療診断・投薬・治療アドバイスも構成せず、不調がある場合は早めに医療機関を受診してください。
卜瓜 謹按:ここに『瀕湖脈学』全書の研読が終了した。浮沈遅数の四綱から、二十七脈各論、さらには四言挙要の臨床総括に至るまで、李時珍は詩賦の体裁で一套の完全な脈学基礎教育体系を構築した。学人はその理法を明らかにし、その限度を知り、研読の心をもって理性の道を行かれよ。